出会い

とあるカラオケパブの厨房に私は立っていた。そこに、背丈は170cmくらい白いワイシャツ
に黒のスラックス、胸元は第2ボタンまではだけており首にタイをかけて、なんともやる気のなさそうな
”ヒト”が一人店に入ってきた。
私とともに働いていたバイトの先輩がその”ヒト”と仲良さそうに話していた。
その話っぷりは、なんとも腰の低い丁重な面持ちで且つ、嫌味のない・・・でいてマイペースな内容であった。
そのやる気のなさそうな”ヒト”は帰り際に”おきばり”といって去っていった。
そう、彼は同一系列の店でバイトをしている”ヒト”であった。
これが、私と”ヒト”のファーストコンタクトであった。

あれから11年。時代は流れ、年を重ね、各々の道を突き進んできた。ある種、思い出として記憶の片隅に
葬り去られていた若きころの生活が、ひとつのきっかけから思いもよらなかった展開へと私を導いた。
”ヒト”の情報は伝達関数をラプラス変換し・・・(つまりインターネットってやつで)世界中に飛びまくる。
この情報が2度とないと思っていた”ヒト”との再会をもたらした。
あの頃の面影を保ちつつ、しかしあの頃の輝きは・・・???。
これが、私と”ヒト”のセカンドコンタクトであった。

11年もの間、ベースに触れる事もなく”ギブソン君”は倉庫に眠り続けていた。
ハードケースに入れていたせいか、それほど腐食もなく11年のときを経て、今
まさに”ギブソン君”が復活したのであった。

この”2003秋味”にはそんな懐かしさやせつなさがいっぱい詰まった作品である。しかしこれは一部の
”ヒト”にしかわからないかもしれない。いや、絶対にわからないであろう。
まずは是非、当時の人々に聞いてもらい。
あの頃の甘酸っぱくも苦々しい時を少しでも感じてほしい。

また、あの頃の輝きを取り戻すべくがんばった作品でもある。

私はそんな思いでこの作品に携った”しがないサラリーマン”です。

最後に、出会いは本当に面白くも脆く、でも非常に大切なことだとあらためて実感する。今日この頃である。

                                            2003年9月22日
白井